TSMCがアメリカのアリゾナ州に5nmプロセスの半導体工場の建設を決めました。
なぜ広いアメリカの中で、TSMCはアリゾナを選んだのか?
同じくインテルもアリゾナ、サムスンは少しお隣のテキサスに半導体工場建設を決めています。
半導体大手メーカーの戦略について考えてみたいと思います。
この記事はこんな方におすすめです。
- TSMCのアリゾナ進出の理由を知りたい方
- サムスン、インテルの進出先が知りたい方
- 半導体の工場建設について知りたい方
TSMCをアリゾナに呼び込んだのはバイデン政権
『半導体不足による減産』こんなワードはニュースで聞き慣れるようになりました。世界中で半導体不足のため製造に支障をきたしています。日本では、トヨタをはじめとして自動車メーカーが相次ぐ減産に追い込まれました。
全ては半導体不足が原因ですが、その解消のため、各国、半導体確保に躍起になっています。日本が熊本県の菊陽町にTSMCを誘致したのも半導体を確保するためです。
これはアメリカでも同様。むしろアメリカでは、日本よりも、もっと激しく半導体工場の建設に向けて各メーカーを誘致しています。その力の入れようは、政府の補助金額にも如実に表れています。
- 日本:6,000億円の補助金
- アメリカ:およそ5兆7,000億円の補助金
アメリカは日本のおよそ9倍です。
日本では、6,000億円の補助金で大きな話題となりましたが、アメリカは残念ながらその比ではないのです。こういった補助金も、TSMCやサムスンがアメリカに工場建設を決めた1つの要因です。半導体工場の建設はお金が必要ですが、その一部を国に負担して貰うことにより、メーカーとしては出費を抑えることが出来るわけです。
半導体工場の建設先はアメリカ南部
TSMCはアリゾナに工場建設を決めましたが、アリゾナ州はアメリカの南部地域になります。南部と言われても広いですが、イメージとしては西海岸よりの南部地域です。アメリカ地図を見た時に左下に位置しています。
また、TSMCのアリゾナだけではなく、インテルもアリゾナ州に工場建設を決めている他、サムスンはアリゾナに近いテキサス州に工場建設を決めています。
- TSMC ⇒ アリゾナ州
- サムスン ⇒ テキサス州
- インテル ⇒ アリゾナ州
アメリカ南部に集中しているのには理由があります。実はTSMCなどの半導体工場以外にも、これらの地域への進出が増えており、アメリカの州内でもホットな地域と言えます。
TSMC&インテルがアリゾナ州を選んだ理由
TSMCとインテルがアリゾナ州を半導体工場の建設地に選んだのは様々な理由があります。それを紹介する前に、まずアリゾナ州の場所はこちらになります。
アメリカの中でも左下の方だね。
アリゾナ州のメリット:環境
アメリカというとハリケーンなどの自然災害をイメージしますが、実はアリゾナ州はアメリカの中でも自然災害がとりわけ少ない地域となっています。雨も少なく砂漠地帯ですので、リスクを小さくすることが出来るのです。
TSMCやサムスン、インテルなどの半導体メーカーが一番恐れるのは、半導体工場がストップすることです。基本、半導体工場は24時間 365日、稼働し続けます。一度、半導体工場がストップしてしまうと再稼働までには多くの時間を要するためです。そのため、工場がストップするリスクが少ないというのは、大きな魅力となるのです。
以前、アメリカでは寒波によって半導体工場が停止したり、日本でもルネサスが火災により半導体工場の停止を余儀なくされました。半導体メーカーは、出来るだけ短時間でたくさんの半導体を製造し、販売することによって利益を創出します。
『半導体工場の停止 = 利益の喪失』となるため、何が何でも稼働し続けることが絶対であり、そのために半導体工場の担当者は稼働し続けるために多くの神経をすり減らすことになるのです。
アリゾナ州のメリット:人材が豊富
TSMCもサムスン、インテルも半導体工場を建設したところで、稼働させる人がいなければ半導体を製造することは出来ません。そのため、半導体工場を建設する際には、同時に人材を確保するということが、非常に重要になります。
日本の熊本県に建設されるTSMCの半導体工場も、実に1,500人、周辺の関係会社も含めれば3,000人もの雇用が創出されると言われています。地元にとってはありがたい話である一方、『どうやってそんなに人数集めるの?』という声も既に聞こえ始めています。
アメリカも同様で、半導体工場の建設が決定したら、次はそれを稼働させる人材の確保にメーカーは動き出しています。アリゾナ州は、州の活動として企業を誘致するために人材に関する環境整備に力を入れている他、アリゾナ州の大学では半導体関連の教育に力を注いでいるのです。
アリゾナ州は半導体関係の人材を集めやすいと言えます。
インテルは、40年以上前からアリゾナ州に工場を建設し、地元で多くの人材を確保してきました。今回、TSMCはアリゾナ州のそういった一面にもメリットを見出したわけです。
サムスンがテキサス州を選んだ理由
TSMCとインテルがアリゾナ州に半導体工場の建設を決めた一方で、サムスンはテキサス州へと工場の建設を決めています。その紹介の前に、まずはテキサス州の場所をご紹介します。
テキサス州はアリゾナ州の間にニューメキシコ州を挟んで隣の位置関係となります。
テキサス州のメリット:既存工場が近い
サムスンは既にアメリカに半導体工場を建設していますが、その場所がテキサス州となります。そのためテキサス州には、既に多くの関係者が在籍しており、近くに工場を建設する方が地理的な面で有利に働くと見られています。
TSMCやインテルの際にも人材について解説しましたが、半導体工場は人材確保が非常に重要です。その側面から考えた時、既に半導体工場が建設されているテキサス州には多くのメリットがあるのです。
トラブルの際も人材の融通が短時間で可能などのメリットがあります。
テキサス州のメリット:税金がメチャ安
アメリカも日本と同じように様々な税金がありますが、その税率は州によって様々です。高い地域もあれば安い地域もある中で、テキサス州は『所得税が0%』という破格の州となっています。
他にも法人税も0%ですので、企業が負担する税金もアメリカの中で断トツに低いです。そのため、テキサス州は企業にも人にも優しい地域だと言われ、多くの企業がテキサス州へと移り始めています。
テスラのイーロンマスクが移住したことでも話題になりました。
テキサス州は企業誘致のため、戦略的に税率を低く抑えていますが、サムスンの半導体工場の誘致はこれが功を奏したことになります。また、税率が低いことから、テキサス州には多くの人が集まり、それが半導体工場の人材確保へと繋がる見込みです。
今やリモートワークなどで働く場所を選ばない人も増えてきました。そういった人たちにとって、税率が低いテキサス州は魅力的な土地となっているのです。
TSMCに続く半導体工場建設はあるのか?
TSMC、サムスン、インテルとアメリカへの半導体工場建設が続々と決まっていますが、気になるのは『日本国内への半導体工場』の建設ですよね。
既にTSMCの熊本県菊陽町への半導体工場の建設は発表されましたが、他にも半導体工場の建設は確定ではないものの、計画されています。
代表的なのが『キオクシア』です。東芝と聞いた方が馴染みある方もいますが、キオクシアは四日市に7棟目の半導体工場を建設している他、岩手県には2棟目の半導体工場の建設が噂されています。
マイクロンもキオクシア同様に半導体工場の建設が噂されています。マイクロンは広島の自社工場の横に新たな半導体工場が計画しているようです。
アメリカのTSMCなどの誘致に負けず、日本国内でも半導体事業を盛り上げるべく頑張って欲しいものですね。
TSMCがアリゾナ進出を決めた理由のまとめ
TSMC・サムスン・インテルはそれぞれアメリカに大規模な半導体工場の建設を発表しています。アメリカ南部に集中していますが、それぞれ選択した地域には大きなメリットがあります。
それらのメリットを享受しながら、今後、世界的な半導体不足を解消すべく、この3社が業界をリードしていくのは間違いないでしょう。
日本でも、TSMCが熊本県菊陽町に半導体工場の建設を発表しましたが、キオクシア、マイクロンなども続き、日本も半導体不足解消のため、世界と渡り合って貰いたいものです。
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