半導体のニュースで『ファウンドリ』と『ファブレス』ってよく聞くけど、どう違うの?
今回は、この疑問に答えます。
TSMCの工場誘致など半導体のニュースが盛んに報じられていますが、難しい用語がたくさんありますよね。そんな疑問を1つずつ解消していきたいと思います。
TSMCはファンドリか?それともファブレスか?
気になるTSMCについても、しっかり解説していきます。
この記事はこんな方にオススメです。
- ファウンドリとファブレスの違いについて知りたい方
- TSMCがファウンドリなのかファブレスなのか知りたい方
- 半導体のニュースに出る難しい語句を理解したい初心者の方
ファウンドリは製造請負業
半導体業界では、各メーカーは、『ファウンドリ』・『ファブレス』のどちらかに当たります。
その中のファウンドリは製造請負業のことを指し、設計された製品の製造を専門に行います。設計もせずに製造だけなんて・・・と不思議に思うかもしれませんが、半導体業界では設計と製造はメーカーによって分業されています。
熊本に半導体工場の建設を発表したTSMCも、ファウンドリ企業に当たります。つまり、TSMCは自社では設計は行わず、半導体設計メーカー(後ほど説明しますが、これがファブレス企業です。)が設計した半導体の製造を請け負っているのです。他には、韓国のサムスン電子やアメリカのGloblFoundriesなどが有名なファウンドリ企業になります。
『製造だけでメリットあるのか?』と思う人もいそうですが、実はファウンドリにはビジネスモデル上、大きなメリットがあり、半導体業界では大きな力を持っているのは多くの人が知るところです。日本を始め、世界中でファウンドリ企業の誘致合戦が繰り広げられており、アメリカはTSMCやサムスン電子の誘致に成功しています。
ちなみに、ファウンドリは、英語の『foundry』から来ています。本来は鋳物工場を指す言葉のようですが、今では半導体工場を指して使われるようになっています。
それでは、他にファウンドリ企業にどんなメリットがあるのか紹介します。
メリット①:売上の動向を吸収出来る
半導体業界が好調でも、メーカーごとに見れば、やはり波があるのは避けられません。あちらの企業が良くても、こちらの企業はイマイチなんていうことは当然あります。
しかし、ファウンドリ企業では、一般的に複数社から製造請負を行うため、1つの企業が不調であっても、他の企業でカバーするという対策が取れます。2社がシェアを争っていたとしても、そのどちらからも製造を請け負っていれば、トータルに影響はないといった形です。
請け負う企業が増えれば増えるほど、動向に左右されるリスクを減らせるというのは、ファブレス企業の最も大きなメリットの1つです。ビジネスモデルとしても経営を安定させることが出来るため、優れた方法とされています。
メリット②:製造技術に特化出来る
ファウンドリ企業が、製造請負業と言っても、その製造を行う上では様々な製造技術が必要です。半導体で言えば、ムーアの法則による微細化が話題です。7nm,5nm,3nm,2nmと進化してきていますが、ここには最先端の技術が集約しています。
3nmや2nmといった製造技術は、TSMCやサムスン電子だけが持つ技術であり、日本には残念ながら40nm程度の製造技術しかありません。ここにいかに大きな技術差があるか理解出来るでしょう。
ファウンドリ企業は、製造請負業が故に、製造技術に特化することが出来、最先端の製造プロセスを実現することが出来るのです。当然、設計メーカーも最先端の半導体は最先端の製造技術を持つファウンドリ企業にお願いするとなるのは当然と言えます。
熊本に建設されるTSMCの工場は、24nm周辺の半導体ということですから、半導体関係者が手放しで喜べない理由はそこにあるのです。ちなみに、アメリカに建設予定のTSMCの工場はシングルナノサイズの半導体工場が建設予定です。
メリット③:材料の値引き交渉が可能
ファウンドリ企業は、多くの企業から半導体の製造を請け負うため、必要な材料も膨大な量となります。そうなると、当然、材料メーカーに対しても価格交渉が可能となるわけです。
たくさん買うから安くしてよ!ってやつだね。
製造を行う上で、材料のコストをいかに下げるかというのは非常に重要です。その価格交渉が可能となり、製造をたくさん請け負うファウンドリ企業がより安く材料が購入でき、更に多くの製造を請け負うという循環が出来ることになります。
このようにファウンドリ企業は、多くの製造を請け負うことによる得られるメリットがたくさんあります。主にボリュームメリットが多いイメージです。
それでは、そのファウンドリ企業に対して、ファブレス企業がどういったものが紹介します。
ファブレスは企画・設計会社
ファウンドリ企業が製造請負業だったのに対し、ファブレス企業は企画や設計を専門に行う企業を指します。ファブレス企業が設計した半導体をファウンドリ企業が製造するというのが大まかな流れです。
ファブレス企業の代表的な企業としては、『Qualcomm』・『Broadcom』・『NVIDIA』などです。ファウンドリ企業に比べると、あまり名前が聞くことは多くありませんが、特にアメリカや台湾に有力なファブレス企業は多く存在しています。
ちなみに、身近なところで言えば、アイフォンを手掛ける『アップル』も代表的なファブレス企業です。自社で半導体を設計しているのはもちろんのこと、アイフォンそのものも、自社では製造工場は持たず製造委託しています。
ちなみに、ファブレスというのは、Fab(工場)をless(持たない)というところから来ています。それでは、ファウンドリ同様にファブレス企業にもどういったメリットがあるのか紹介します。
メリット①:初期投資を抑えることが出来る
半導体を製造するためには、多くの製造設備、巨大な工場が必要となります。熊本に建設されるTSMCの工場は建設費8,000億円と言われていますので、製造工場に大きなお金が必要なのは明確でしょう。
ファウンドリ企業は、投資額が大きくなりがちなのに対して、ファブレス企業は製造設備を保有しないことから、初期投資を抑えることが出来ます。これは費用だけではなく、人材という面でも同様です。
ファウンドリ企業は、工場運営に多くの人材が必須です。TSMCの工場では、新たに1,500人の雇用が創出されると言われていますが、それほど多くの人材が必要だということです。もちろん人材を集めるにも多くの労力が必要でしょう。
ファブレス企業は、企画・設計ですので、ここまで多くの人材は必要ありません。人材の面でも、ファブレス企業はファウンドリ企業に比べて小さく始めることが出来るのです。
メリット②:フットワークが軽い
半導体業界は、フットワークが非常に求められます。世の中で求められる最新技術に対応するため、現在の最新技術が来年には古い技術になり得るのです。
そのため、フットワークが軽く、市場の動向に併せて即座に対応していく必要があります。ファブレス企業は、自社で製造設備を保有しないことから、市場の変化に対応していくことが可能となります。
市場の動向へ対応するという点では、ファウンドリ企業も同様ですが、ファウンドリ企業は製造技術に特化することが出来るため、ファブレス企業ほどの対応は求められないのです。
メリット③:設計に集中出来る
ファウンドリ企業のメリット同様に、ファブレス企業も特化することで企画や設計といった得意分野に集中することが出来ます。半導体と一口に言っても、製品ごとに必要な半導体は様々です。
優れた半導体Aが、全ての最先端設備に適応するかと言えば、決してそんなことはありません。半導体ごとに求められる仕様は様々です。そのため、アップルを始めとしてファブレス企業として、自社に必要な半導体を設計する企業が増えてきています。
そういう意味では、ファブレス企業の方が参入障壁が低く、カスタマイズ性が高いと言えます。参入障壁が低いというのは、ビジネスモデルとしてはデメリットのようですが、アップルにはアイフォンという圧倒的な製品を持つため、可能とも言えます。
他にも圧倒的な設計力や企画力といったファブレス企業として成功するためには、相応の能力が求められますが、集中出来るというのは、ファウンドリ企業同様、ファブレス企業にとっても大きなメリットの1つです。
半導体のファウンドリとファブレスの違いまとめ
半導体メーカーには、ファウンドリとファブレスといったビジネスモデルとして大きく違う2つに分けることが出来ます。ファウンドリは製造請負業であり、ファブレスは企画・設計企業です。
ファブレス企業が企画・設計した半導体をファウンドリ企業が製造します。
TSMCは、ファウンドリ企業に代表格ですが、ファブレス企業ではアップルなど名だたる企業が多く存在しています。この先、日本企業もファウンドリ・ファブレスにおいて世界のトップに食い込めるのか?気になるところです。
益々、活況となる半導体、日本勢もぜひ頑張って欲しいところです。
ファウンドリとファブレスの違い参考になったかな。
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